落語物語

 強風域には入ったが、暴風域にはまだ遠い。そんな状況で、タブレットで映画鑑賞。

 レビューが賛否両論分かれていたため、いったん躊躇はしたんだが、結局購入してしまった、林家しん平監督の「落語物語」。DVDではなくPrimeVideoの話。主演の柳家わさび師匠が、真打昇進の時に、ゲストとしてピエール瀧を招くはずだったのに、逮捕で流れてしまったというネット記事を読んで、どこでどういう風につながっていたのか不思議に思っていたが、この映画がきっかけなのかもしれない。申し訳なくも、ミュージシャンとしてのピエール瀧にはまったく興味がないけれど、役者としてはかなり良いダシが出るタイプだと思うので、一日も早く復帰してほしいところ。

 マクラを振ったり小咄を並べたりしてその後で本題に入るという、落語風の構成で、確かにストーリーとしては著しくベタだし、話の展開が呆気にとられるくらいに強引で、作品の質云々と言われると困ってしまうが、細かい部分が落語ファンとしては面白くて仕方がない。床屋の親方役の権太楼師匠が、病室で騒ぎまくるピエール瀧のそそっかしさに呆れて医師に発するセリフの間とか、もう、実に絶妙。菊生師匠のカメラマンの演技は、無理も無駄もなくすごく良かった。客席に日本一汚いももえこと春風亭百栄師匠がいらしたり、一朝師匠のお弟子さんの三朝師匠、円丈師匠のお弟子さんの彩大師匠のお二人も常連役で座っていらしたり、こんなところにこんな噺家さんが! という、ウォーリーを探せ系の楽しみ方も出来る。

 権太楼師匠以外で個人的にツボだったのは、なんちゃって長門裕之こと桂文楽師匠。それと、ごま塩(註・芸名)役の古今亭志ん橋師匠。ビール瓶で殴られて頭からケチャップを流す堅物噺家役の隅田川馬石師匠は、前座時代はあんな感じだったのかも。相当怖かったらしく、なんでもバッグの中に人切り包丁と雲助師匠の生首が入っていたという噂。刑事に随い、私の中では帝都物語のイメージしかない嶋田久作を霊安室に案内する警官役の一之輔師匠は、最初気付かなくて、探すためにリプレイしてしまった。

 病室のシーンで輸液が落ちていなかったり、命にかかわる病気という設定なのに田畠智子がICUに入れてもらえなかったり、柳家わさび師匠演じる小春が終盤ありえない代役を担ったり、ツッコミどころも多かったので、いっそのこと、キャスト全員噺家にして、気長な人情コントにしてしまった方が、うるさ方に四の五の言われずに済んだのでは。

 噺家が演じる鹿芝居の延長として捉えた方がいいのかも。監督のしん平師匠も、あえてそういう意図で演出をされたのかもしれない。