ピアノ・レッスン

 ずっと前から気になっていて、ようやる観ることかなったピアノ・レッスン。評判通りの秀作で良い時間を過ごせた。

 Amazonには、「ホリー・ハンターがサム・ニールを好きになれないのは理解できるけど、ハーヴェイ・カイテルに惚れるのは理解できない」という感想もあったが、まあ、女心と秋の空ってことで。私が知る限りでは、男心もたいがい秋の空だけど。

 この疑問にあえて回答を見つけるとすれば、ホリー・ハンター演じるエイダを、会話が出来ない一人の人間としてしか見ていなかったサム・ニールと違い、ハーヴェイ・カイテルの方は、エイダがピアノと不即不離の関係であることを見抜き、受け入れた上で、彼女との交渉を始めたという点に集約されるはず。まだまだいろいろな差別が色濃く残っていた時代設定の都合もあり、サム・ニールの視点で見るエイダは、過去に自分の意思で発話を棄てた、欠点のある女性。一方ハーヴェィ・カイテルがその目に受け止めたエイダは、プロではないが、優れたピアニスト。言葉を使わない――先天的に話せないわけではない――という、当時の感覚で語ることが許されるなら、著しくネガティブな要素を相殺して有り余るほどの才能を受け入れてくれたという点だけとっても、経緯はいろいろ問題があるにしても、充分恋愛対象足りえるはず。

 この作品で、アカデミー賞の助演女優賞を11歳で受賞した、アナ・パキンのこまっしゃくれ具合には終始イライラ。そういう性格付けがされたキャラクターだから仕方ないけど。多分私がハーヴェイ・カイテルなら、「ごめん、手が滑った」とか言いながら、ラストで海に突き落とす。不可抗力。

※書いていて、二十代の頃小説で読んだ、覇王別姫を思い出した。話の中で、切り落とされた指のイメージが鮮烈に残っている。映画版を観ていないので、こちらもいつか観てみないと。