め〇らのお市 命貰います

 とうとうお市のシリーズも最終作。ラストで感極まって滂沱の涙なんてことは一切なかったことだけ最初に記しておく。

 エンターテイメント化という方向性としては間違いはないんだろうけど、情の深みに関しては、後のシリーズは、結局どれも第一作を越えられずじまい。まあ、突き詰めて考えれば、二作目以降の出来事は、深くかかわりこそすれ所詮お市からすれば他人事というのもあるんだろう。お市の立ち位置も、いつの間にやら正義の味方になってしまって、寂しい限り。ただ、賭場荒らしは相変わらず。

 最終作のゲスト出演は、目黒祐樹と丹波哲郎。オープニングのキャスト紹介で、「時代劇初出演」と記してあった目黒祐樹だが、今はともかく、この頃はとにかく芝居が下手で、天性の目力だけで乗り切っている状態。そのせいでシリアスな場面も時々コント化するため、温度差に注意。丹波哲郎は、時代劇では毎度おなじみ用心棒の謎の浪人役。謎の浪人が謎を何一つ解決することなく颯爽と馬に乗って去ってしまった前作と違い、今作ではクライマックスできっちり正体を明かしてくれる。

 今作、お市は、冒頭に起こしたとある事件のせいで、首に百両の賞金をかけられる。賞金目当てに付け狙う三人組の一人が目黒祐樹。長崎で医学を学び、浪人のような風体だが、実は漁師のせがれ。前作に引き続き、芸人枠として、庄司玲児敏江先生方。ガマの油売りの口上を披露。なお、東京の寄席では、漫才の場合は「師匠」ではなく「先生」という敬称を用いるそうな。

 まあ、総じて、最近の駄作連発の邦画よりは楽しめた。何度も観たい名作や傑作というわけではなく、時代劇好きが、ありがちな演出の矛盾を様式美として割り切ったうえで楽しむための作品でしかないが、当時の目黒祐樹の芝居が浮いて見えるということは、周囲の人間の演技がしっかりしていることの間接的な証左でもあるし、何より、お市の内面の強さが心地よい。私は昔から上目遣いで猫なで声を出す女を見ると両目に指を突っ込んでやりたくなるタイプなので、その手の女が「あーん助けて」と男の陰に隠れるような映画は、虫唾が走って観ていられない。

 今日は昼に五街道雲助師匠の「お初徳兵衛」もNHKでチェック。どこぞの政党にNHKをつぶされたら落語番組が無くなって困るかも。