め〇らのお市 地獄肌

 正しいタイトルを書く気概は相変わらず出ない。それにしても松山容子の綺麗なこと。まるで上品な博多人形が動いているみたい。おはようからおやすみまで一切崩れぬがっつりメイクは相変わらず健在。以下、ネタバレ。

 一作目では愛した人から捨てられ通しだったお市が、大店の娘お京、人斬りでもいいと娶ってくれた茂作など、今作では情が移った相手を次々に涙ながらに棄てることになる。なんぼなんでも幸薄すぎないか、お市。今作お市を付け狙う女兇賊を演じるのは、松岡きっこ。黒蜥蜴では虫も殺せないお嬢様役だったのに、今作ではほぼ妖怪人間ベムのベラ。仲間由紀恵を彷彿とさせるいで立ちで、女の髪を束ねて撚った特製の鞭を振るいお市を手こずらせ、挙句の果てには毒蛇三匹を懐から取り出して投げつけ噛ませるという「それ、確か黒蜥蜴でもやっていた」な必殺技を使う。

 冒頭賞金首を斬った後に出てくる荷車引きの男は、後の話には一切関係しない。自分には親はないと言い張ってお市にくっついていたお京も、特には話に絡まず、まあお手玉というマテリアルを残したという点で、無駄とまではいえないにしても、もう少し話に加わらせて良かったのではという印象。黒髪のお炎との立ち合いで、情けを見せたところに付け込まれ、放り投げられた毒蛇に噛まれた後、寺への長い石段をよたよたと登っていたお市が倒れ込んでどうなるかと思ったら、次の瞬間には水辺で半農半漁の農民に拾われるという謎展開には度肝を抜かれた。メイクの崩れも一切ない、時代を超越したウォータープルーフにも驚かされるが、途中のルートがすごく気になる。毒が回って幻覚を見ていたということか。お市の近くをよぎるご詠歌集団は、まあ心象風景ということなんだろうが、一人くらいお市の着物を覚えていて声くらいかければいいのに。

 もしリブートされることがあるなら、御法度である農民たちの隠し米を掠め取る陰湿なやくざの文蔵役には、落語界の兇状持ちこと橘屋文蔵師匠を推挙したい。村の用心棒の先生は、出来ればお市を鍛えた初恋の相手、飲んだくれの長門勇であってほしかった。松方弘樹パパこと近衛十四郎は、ちょっと格好良すぎるし、お市の出自や背景を想像することしかできない立場のはずだから、「茂助と一緒に家にいろ」というたしなめの言葉が、やや浅薄に感じてしまう。

 そういえば、近衛十四郎の次男、目黒祐樹の主演作は、「ルパン三世 念力珍作戦」しか観たことがない。ルパン役が目黒祐樹。次元役は驚くなかれ、北の国に行く前の田中邦衛。キャストから漏れ知れるだろうが、想像を絶する内容で脳の記憶領域を完膚なきまでに破壊されたため、あらすじすら思い出せない。ルパン三世を実写化したはずなのに、大多数の人がイメージするルパン三世の部分は一片も無かったことだけはかろうじて覚えている。ボンカレーを買ったらレトルトパックの中に腐ったイチゴジャムが入っていましたとりあえず謝っときますごめんなさいみたいなありえなさ。これ以上人生を無駄にしたくないため観なおす気はない。

 明日は、子どもの頃に心打たれたショート・サーキットを観ようか、お市の次作を観ようかと悩んでいる。録画予約している日本の話芸は五街道雲助師匠のお初徳兵衛。滑稽噺の船徳の元になった話で、やたらシリアスな人情話。雲助師匠、鰍沢とか髪結新三みたいな話がお好きらしい。ベクトル正反対の惣領弟子の桃月庵白酒師匠との親子会を一度拝見してみたい。

※昔心打たれたシリーズのラインナップを記しておくと、中学時代の「サウンド・オブ・ミュージック」が筆頭。「ショート・サーキット」「ニューヨーク東8番街の奇跡」「ショーシャンクの空に」「プリシラ」「ドライビング・ミス・デイジー」なども好き。「トーチソング・トリロジー」とか、ジャン・コクトーの一連の映画も観なおさないと。宮崎駿がトトロで使った木が避ける演出は、コクトー版の美女と野獣へのオマージュに違いないと踏んでいる。最近の作品(でもないか)は、「オール・アバウト・マイ・マザー」かな。和訳された脚本を、ネットで知り合った方に送っていただいた。同じころフランソワ・オゾンの不条理でえげつない短編にはまったりもしたっけ。まだ彼が世界的に有名になる前。脚本を送ってくださったamaniさん、お元気ですか。私はそこそこ元気です。