心底呆れたアドバイス

 今までの人生を振り返って、一番呆れた他人からのアドバイスは何かと訊かれれば、学生時代に言われた「新聞の社説を書き写すと多彩な表現力が身に着く」が、それに該当すると答える。

 申し訳ないけど、社説を書く立場の人の文章を、子どものころから、特別に巧いと感じたことはない。視野狭窄に陥って変なことしか書かない人もいるし、そもそも新聞の社説なんて、記事同様に文章技巧とは無縁であるべき。大切なのは伝わりやすさと客観性。巧いと感じさせないのもまた一つの技術だとは思うが、そこまで考えて文章をしたためているとは到底考えられないので、通り一遍の、ある程度体裁の整った文章として受け止めるのが、正しい解釈の仕方なのだと思う。

 頭で考えた文章は、決して心には響かない。直截的に心から文字を汲み出せれば、文章修業なんてきっと要らないはず。

 錦を織る時、特に今の段階では、なかなか思い通りに織ることが出来ず、苛立ちを覚えることがある。上手な人の織り台からこっそり経紙を切り取って、自分の台に貼って、さも自分の仕事のように「織りました」と言い切れたら楽なんだろうが、社説を書き写し、他人の文章を模倣して悦に入るって、多分、そういうこと。守破離の守だけで終わってその先に進めないのであれば、やる意味もない。