その昔

 京都だ大阪だと、関西圏に住んでいた時、向こうのお笑い番組をしばしば観ていた。そのためナインティナインはデビュー当時から知っているが、現在も大炎上中の風俗発言には驚いた。

 内容をかいつまんで説明すると、ラジオ番組の中で「コロナが落ち着いたら、手元不如意になった可愛い子たちが、おそらく期間限定で風俗店につとめるだろうから、今は店に行かずにそれまで辛抱しよう」ということ。

 「風俗店に行くのを自粛しましょう」ということを主張するのが主目的で、それだけだと面白味が無いから何か気の利いたことを言わないとと考えて、前半部分を考えたんだと思うけど、さすがにこれは……。

 今回のケースとはちょっと違うが、どんな手段を使っても笑わせたいという最近の芸人の性(さが)は、しばしば人の心を踏みにじる。私がかなり早い段階で雨上がり決死隊に見切りをつけたのも、劇団ひとりを初めてテレビで観た時から忌避しているのも、差別ネタで笑いを取ろうとしたから。小池真理子も生涯読む気なし。

 今、漫才などではなく、落語をメインに聴いているのは、大いなる予定調和とでもいうべき世界がそこに広がっているからかもしれない。個々人のマクラでイライラさせられることもないわけではないが、時代性を考慮し、極端に差別的な内容であれば、噺自体が葬られる。そこには芸は人を喜ばせるためにあるものだという不文律がある。その潔さが、心地よい。遊郭をあつかったものなど、とりわけフェミニストは嫌がるそうで、私もどうかなと気にならなくはないが、三枚起請にしても、お見立てにしても、落語に出てくる遊女は、したたかで、男を利用し食い物にする立場の女性が多い。少女の場合は文七元結のように禿(かむろ)にすらならずに家に戻れるし、花魁でも、幾代餅なら、男の純愛にほだされて、終の相手と認めて尽くす。

 最近、噺家がYoutubeに動画を頻繁にアップするようになっている。過去にチャンネルを作って放置したままだった、元劇団四季の三遊亭究斗師匠も、生後間もない三人目の赤さんを抱きつつ美女と野獣のガストンの歌を歌ったり、春風亭一之輔師匠も、十日連続ライブ配信などをされている。寄席にも落語会にもなかなかいけない身としては、このご時世、不謹慎ではあるが、かなり嬉しい。一落語ファンとして、せめて再生数を増やす一助になりたい。