北斎漫画

 合谷にせんねん灸を据えた後、新藤兼人監督の「北斎漫画」を観る。原作があるそうで、北斎の人生を戯画的に描いているが、私が期待していたような作品ではなくて残念。

 主人公北斎は緒形拳。友人の滝沢馬琴は西田敏行。馬琴の妻が音羽信子。同じく友人の十返舎一九が宍戸錠。式亭三馬が大村崑。犬猿の仲の喜多川歌麿は愛川欽也。フランキー堺は養父役で、樋口可南子がお直という名の二役を担う。田中裕子が北斎の娘お栄。フランキー堺の家の女中(妻かも)が初井言栄。

 音羽信子と西田敏行が夫婦役という設定にまず面くらったが、それは序の口。樋口可南子と田中裕子が全編通じて脱がされまくるのにひとしきり呆れた。数十年分の人生を割愛する割には、それ、演出として要る? という描写も多く、テンポがいいのか悪いのか。北斎の蛸といえば、インターネット上でミーム化して久しい存在なんだが、よもや昭和の頃にすでに樋口可南子+生きた蛸&ハリボテで実写化していたとは。

 性に対する抑圧がまだ盛んだったという時代背景も考慮する必要があるとは思うが、当時はタブーに対する挑戦として受け取られたとしても、今見たらかなり滑稽。そこだけコントみたい。

 いいやもう、この作品に関しては、感想もこの程度で。若いころの樋口可南子か田中裕子の裸が観たい人だけどうぞ。フランキー堺が樋口可南子の、西田敏行が田中裕子の乳首を吸う場面を削って、北斎の持つ数学的な絵画理論にもっと焦点を当てていれば、その無軌道ぶりも対照的な表現となり、彼の人生に深みを持たせ、かつ意味を成したんだろうけど、そういう部分がまるで描かれていなくて、極度に性的だったり人格が破たんしていたりという程度の浅薄な描き方で興ざめ。

 視聴した時間を、織りに回した方が百倍良かった。強いて書けば、フランキー堺が鴨居に身を任せたシーンで、初井言栄が「首吊ったー」と狂気に満ちた笑顔を見せたところか。小学生当時休み時間にヤヌスの鏡ごっこをして遊んでいたくらいなので、初井言栄が演じる役の見せる狂気は、ちょっとした御馳走。