レクリエーションとしてのおりがみ陶芸

通所介護でおりがみ陶芸を取り入れる際に、レクリエーションとして取り入れるのか、あるいは個別機能訓練加算として取り入れるのか、あるいは加算を算定しない機能訓練として取り入れるのかでも、取り組み方は違ってくると思います。おりがみ陶芸の作品を制作する過程で用いる「折る」という行為は、手紙を封書に入れたり、届いた郵便物を整理するという作業に通じますし、泥漿を塗る、あるいは描くという行為は、それ単独で筆を動かす訓練になります。カッターやハサミで切る、切ったものを貼る、出来上がったものに名前や目印を書くなど、いくつもの作業を連続して行い、定期的に繰り返すところも、手指の機能だけでなく、新たな手続き記憶の獲得と、それに伴う自信の回復などにもつながるでしょう。そういう点では、プログラム(とローカルルール)次第で、個別機能訓練加算Ⅱの算定が出来るかな? という気もするのですけど、加算の算定要件として、定期的なモニタリング以外に、「機能訓練指導員から直接指導してもらう」という項目があるとのことで、現在看護師が機能訓練指導員を兼務しているうちの事業所では、その時点で算定が難しく、おりがみ陶芸をそのまま訓練のためにプログラム化するということはしていません。機能訓練の時間は、歩行訓練や立ち上がり、発声の訓練などを優先しています。この場合、機能訓練指導員としては常勤でも専従でもないため、加算Ⅰが算定できず、結果としては、完全にサービスで実施しています。

おりがみ陶芸を取り入れたレクは、心身の両面に影響を与えますので、いいことづくめのように思われますが、実際に介護の現場でおりがみ陶芸を継続的に取り入れるには、いくつか注意しなければならないことがあります。認知症の方の異食や呼吸器疾患の人に留意するというのは当然の義務です。他にも、コストの問題、焼成の問題などがあります。私がデイサービスのレクとしておりがみ陶芸を取り入れた理由の一つに、以前に家庭用電気炉を事業所で購入していたというのがあげられます。電気炉がなければ、もしかしたら「面白そうだなあ」と思うだけで、実際に制作に取り組んだりはしなかったかもしれません。それと、うちの事業所は、佐世保に車で日帰りで行ける距離にあるということで、気軽に訪問できますし、いろいろと陶芸センターの皆様に助けていただいています。遠方の方は、メールや電話でも親切にご教示くださるので、気になること、知りたいことがおありでしたら、是非コンタクトを取られることをお勧めします。

介護度だけで言うなら、要介護4の方でも、蝶や鶴の制作は可能でした。ただその方は、主に認知症での認定で、ADLには特に不安がなかったので、陶芸紙を折るという手順に関しては、スムーズに実践されました。もっとも、数分おきに自分が取り組んでおられることを忘れられるため、その都度一から説明しないといけないというのはありましたが、それは認知症の方の介護の現場ではありがちなことで、事前に想定されていたことなので、特に問題にはなりませんでした。

身体状況のみの認定の方の場合は、特に上半身の機能、後遺症としての手のしびれや動かしづらさ、あるいは片麻痺などがあられる方は、どの方も消極的になられました。昔出来たことが出来なくなっているという現実を突きつけられるのが苦になるという印象を受ける方、または単に昔から手作業が苦手という方など、それぞれでしたが、作りたいけど出来るかどうかわからないという方に関しては、横につきっきりで手伝って差し上げることで、充分鑑賞に値する作品を制作され、自信の回復にもつながりました。

「(町の)文化祭に出品しましょうね」とお伝えすると、皆さん面映ゆくなられるようですが、期間中、町内の福祉事業所専用エリアにあつらえた事業所のブースに、音年、去年と、二年続けてレクリエーションでの作品として出品させていただきました。ご覧になられた方が、「紙? 焼き物?」とまず戸惑われ、その後焼き物だとわかると、一様に驚かれるので、事業所の良い宣伝にもなっていると思われます。今年もいくつか共同制作を行い、出品する予定です。

継続という点を考慮すると、一番いいのは、手作業やクラフトが好きなスタッフが、陶芸センターやインストラクターの元で講習を受けて、制作指導することなのですが、介護職が制作にはまってしまうと、どうしても、本業の介護に必要な見守り、介助が手薄になってしまいますので、そのあたりも配慮しないといけません。私の場合は、現時点では通常は事務として勤務している関係で、材料持参で事業所に行っても、介護職が不足するということにはならないのですが、人員基準をクリアするぎりぎりの人数でシフトを組まざるを得ない事業所では、ボランティアの方に慰問という形を取ってもらうなどした方が良いかと思います。

焼成に関しては、電気炉を所持、または購入予定でなければ、陶芸センターに依頼するか、お近くのインストラクターで焼成が可能な方に委託するか、あるいは電気炉やガス炉のある自治体や近隣の事業所・病院に相談して焼成してもらうか、いずれかの方法を取らないといけません。この場合、陶芸センターやインストラクターであれば、おりがみ陶芸の焼成手順がわかりますけれど、おりがみ陶芸の焼成経験がないところに依頼する場合は、最低限パールガラスの購入した上で、「さや鉢などに入れ、周囲をパールガラスで埋めて姿形を保持し、まず本焼きの温度で焼成をして、取り出して釉薬を塗った後、今度は素焼きの温度で二度目の焼成をお願いします」というような伝え方をしないといけません。手順が通常の陶芸と違うので、面倒がられることもあるでしょう。ですので、外部に依頼する場合、陶芸作品としての持ち味や印象は薄れますけれど、高温焼成だけを依頼し、ニスやエポキシ、あるいはレジンなどで仕上げをした方が取り組みやすいです。レジンなどの場合、ガラス質の釉薬と違い、割れにくくなるというメリットもあります。ただ、この場合、コーティングする素材によっては劣化し変色することが考えられます。釉薬を塗れない接地面で、家具や調度品に傷がつかないように、レジンを塗ることがありますが、見た目は釉薬とさほど違わず、境目もほとんどわかりません。また、レジンは作品の接着用にも使えます。食器用エポキシは、オカリナでも使われているので、レジンよりはイメージはしやすいでしょう。なお、高温焼成後の釉薬の固着だけなら、七宝用の小型電気炉でも可能です。

陶芸紙や関連材料の値段ですが、陶芸紙に関しては、インストラクター初級コース受講者は一割引き、中級コース受講者は二割引きで購入できるという特典があります。泥漿、パールガラス、耐酸透明釉薬に関しては、割引価格は設定してありません。釉薬は業者からの仕入れとなっているとのことで、値段はそのままその仕入れ先の販売価格が反映されています。

材料の販売価格などは、別途まとめています