鹿島錦保存会

今では「佐賀錦」の名称の方が有名ですが、本来の名称は、鹿島城の大奥で生まれたことから、「鹿島錦」。

発祥地には小城説や京都説など、いくつかあるようですが、最も有力とされるのが、鹿島鍋島家の九代(佐賀藩による数え方では七代)藩主夫人柏岡の方が、病床で見た天井の網代編みに感銘を受け、そば仕えの並木某に相談し、観世縒り(和紙のこより)を使って印籠を作らせたところ、非常に赴き深いものが仕上がった――そこが起点と言われています。

明治初期に技術が断絶しかけますが、大隈重信夫妻の助力で再興され、明治43年の日英博覧会にも出品、「日本手芸の極致」と、現地で大絶賛を受けます。その際に、知名度を考慮して、「鹿島錦」ではなく「佐賀錦」の名称が用いられ、鹿島を源流とする二つの錦、鹿島錦と佐賀錦が別れることとなりました。

横浜のシルク博物館などで佐賀錦の展示を見たこともありますが、個人的な印象を述べれば、佐賀錦は前衛的、鹿島錦は伝統的という分類が出来ると思います。もちろん前衛的と言っても現代アートのようなポップさやエキセントリックさはないですが、主として東京を中心に実験的な制作が繰り返され、さまざまな技法が確立されています。一方鹿島錦は、本来の伝統を負わなければならないという義務があり、幾何学模様を中心に作品を仕立てます。そのせいで、流麗華美を是とする一部の佐賀錦界隈の方が、悲しいかな、根拠が薄弱な状態、おそらく実地の経験というより、自身の脳内に存在する古めかしい偏見を基に「佐賀の人はこれは織れない」「佐賀にはこの道具はない」など、批判的な言動を取られることがありますが、源流を否定するということは、立脚すべき土台を自ら蝕むむなしい行為。鹿島錦の土台があったから佐賀錦というのは生まれたわけで、袂をわかったとはいえ、礼節という言葉の意味を咀嚼して、双方敬意をもって接するのがよろしいのではないでしょうか。現在資格を持つ診療放射線技師の中で、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンを見下す人はいません。自らの所属する世界にすでに確立された技術を恃めばそれで人類文化の考察がすべて済むのであれば、文化人類学者のフィールドワークなど無益そのものと言えるはず。愚かなことこの上ないと思います。

佐賀錦に佐賀錦の素晴らしさがあるように、鹿島錦には鹿島錦の素晴らしさがある。私は鹿島市出身ではないですが、鹿島錦が産声を上げたその地で、学生時代を過ごしました。恵まれた高校生活とは言えなかったし、本来農業系の高校で花を育てる勉強がしたかったにも関わらず、周囲の圧力で普通高校に通わされ、在学中はその場に自分がいることに違和感を拭えず、授業はさぼる、勝手に帰るなど、不真面目そのものという態度で生活していました。私があの場にいたことに何らかの意味があるのだとしたら、おそらく鹿島錦への遠因こそがそうなのかもしれません。

オカリナを作る材料をめぐっておりがみ陶芸に出会えたように、おりがみ陶芸に使える錦の端切れがないか検索して、鹿島錦保存会に出会いました。鹿島錦そのものは、鹿島駅などでも販売されていましたので、存在は知っていましたが、保存会に入会しようと思ったのは、情報源としてはすこぶるつきに有用なインターネットと、それから、おりがみ陶芸の作品をよりグレードアップさせたいという渇望に近い想いがあったいからです。入会した平成29年10月26日が、私の創作人生の第二のスタート地点。平成30年2月13日現在、おりがみ陶芸と鹿島錦の両方をやっているのは、文字通り世界でも私だけですので、鹿島錦の課題が終わり次第、誰にも真似できない表現を追求するために、おりがみ陶芸と組み合わせた作品制作に入ります。

鹿島錦保存会初心者教室

・毎週木曜の午前9時から午後4時まで(無条件に推奨は出来ませんが遅く来たり早く帰ったりと、フレキシブルな参加も可能です)
・弁当持参
・第五週目は休み。また、文化祭などのイベントの時も休み
・場所は鹿島市エイブルの3F
・祝祭日の翌日は、エイブル自体が閉館のため、教室も休みとのことです

鹿島錦保存会に入会するための条件は特にありません。居住地域も不問です。遠くは東京の方も会員になられています。

  1. 入会金……1,000円
  2. 会費……一ヵ月あたり500円
  3. 道具……一年間は貸与。基礎織の段階(四つの課題があります)では材料費は無料。

入会希望の方は、まず祐徳博物館に連絡をお願いします。代表電話番号になっていて、最初に祐徳神社の方が出られますので、博物館の方につないでもらってください。もっとも、教室が開催されているエイブル自体は公立の建物で、一階が図書館になっていますので、思いついたときにいらして見学等されても、態度が居丈高でない限りは、大丈夫ではないかと思います。

問合せ 0954-62-2151 (祐徳博物館内)


課題に関して

その時々によって変化があるようですが、私の場合

・基礎織①――3mmの紙(10割)を経緯に使った平織り、流水、平織り交じりの流水、網代の練習。流水は佐賀錦では「鋸刃」と言われることもあります。
・基礎織②――使用する材料は同上。外縁部に違いがある二種類の桝と別パターン網代を練習します。
・基礎織③――35割・初心者用金(アルミに着色したものだと思います)を経紙にして、好きな色の中糸で、紙で練習した模様を織ります。一枚目なので苦労の連続です。糸掛けなどもこの時教わります。それぞれ7cmずつ模様を織り終えたら、好きな模様を織れます。
・基礎織④――同上。ただし模様は自由。単色ではなく複数の色を使って色替えの勉強をします。

資料

鹿島錦保存会設立五十周年記念作品。現在は鹿島市と祐徳稲荷神社に寄贈してあります。

最新版のパンフレット。汚れた感じに見えるのは、いささかくたびれたスキャナのせいです。

長崎県佐世保市生まれの「おりがみ陶芸」を中心に、鹿島錦など趣味のクラフトワークその他についてつらつらと綴るブログです。